在米の隠居爺です。 日本で生まれ育ちましたが、考えるところがあって若いころにカミさんと当地に渡って来ました。
日本の運転免許はとったことはありません。 アメリカの運転免許をもとにアメリカで手に入れた国際免許を使い、日本の道路で日本の車を運転して走ったことはあります。 日本に暮らして居た経験から、常識的な意味で日本の交通法規は知っているつもりです。
そんな経験から日本の交通ルールや交通事情に思ったことを、『変えた方がいい』 を 『変えてもいい様な』 とか 『こんなのもいいのでは』 と読み替えてコメントしてみようと思います。 以下はその項目です。
- Turn on Red
- 車両感応式信号
- 横断歩道の信号
- 中央待機車線
- 4 Way Stop と ランダバウト
- 標識の省略
【Turn on Red】
信号の赤は 『止まれ』 です。 その基本はアメリカでも同じですが、ひとつ例外があります。 右折です。
左側通行の日本なら左折です。
右側通行のアメリカでは、信号のある交差点で赤信号が出ていても、右折方向に進行するほかの車がいなければ曲がっても構いません。 なので、交差点に近づくとスピードを落として左から来る車や正面から右方向に行く車がいないことを確かめれば止まることなく右に曲がります。 これだけで交差点の通過はとても楽になり、渋滞が起きる可能性も下がります。
聞いたところでは、このルールは半世紀前にあったオイルショックの時、赤信号で止まって無駄なアイドリングでガソリンを浪費するのを少しでも減らそうということが発端だったとか。 本当かどうかは知りませんが、悪くないアイディアだと私は思っています。
交差点の中には赤信号でも曲がってはいけないところもあります。 その場合下の写真のように、正面の信号機の横や道路の右端に 『 No Turn on Red (赤なら曲がるな)』 と明記した標識が掲示されます。
また、子供を載せたスクールバスや危険物を摘んだタンクローリーなどは、右折方向に進む車がいなくても赤信号では右折しません。 それらの車は下の写真のように、後ろに 『 This vehicle does not turn on red (この車は赤信号では曲がりません)』 などと書いてあったりします。
【車両感応式信号】
日本では、信号機と言うとタイマーで制御され、ある一定の時間青となり、それが過ぎるとまた別の一定期間赤になるというのが一般的だと思います。 こんな信号だと、交差する道路を走る車が居なくとも、信号は無情にも赤になることがあり、車は意味もなく止められます。
アメリカにもその手の信号が無い訳ではありません。 しかし、それは多くはありません。 多分かなり少ないと思います。 私が知る限り、私が今暮らす町にはないと思います。
アメリカの道路の信号機は、例外的なものを除き、およそ全米全てのものがと言っていいほど、ほとんどのものは赤信号で止まっている車がいるかどうかを検知するセンサーを持っています。
それはふたつの目的で使われています。 ひとつは、止まる必要がない車を止めないようにするためで、もうひとつが、赤信号でむやみに長く待たされないようにするためです。
道路の信号機は、交差したり分岐・合流する車が衝突しないように、限られた方向に向かう車にだけ通行権を与え、そうでない車を止めるのが目的です。 衝突する可能性のある車がいないのなら止める必要はありません。 また、止めた車に一方的に我慢を強いるのも不合理です。 なので、止まっている車がいるかどうかを知って、『赤にするかどうか』、『青にするかどうか』 を制御するというのがアメリカの信号機です。
日本にもその手の信号機が無くはないようですが、アメリカのように『およそ全て』と言う訳ではないでしょう。 たぶんそれは 『コスト』 の問題ではないかと思います。
日本の場合、下の写真のように、道路上の高いところに下向きに超音波を使った距離センサーを取り付け、それで下を通る車を検知しています。 このセンサーでは、道路面に向かって超音波を発し、それが路面や車から跳ね返って来る時間を計っています。 それが長ければ下に車はおらず、それが短かければ車が居るとわかると言うものです。
下を通る車は大きさによって車高が変わります。 また、超音波が空気中を伝わる速度は温度によって変わります。 車の音が当たる面の向き、トラックの積み荷なんかだとその柔らかさ、雨・雪・霧・風などによっては、反射してくる音の大きさが変わります。
それでも誤検知しないようにするには、それなりの精度・感度で反射してきた音を検知できなければなりません。 そのため、センサーには信号処理にそこそこの電子部品や回路が必要となります。
それに加え、これをするには、まずセンサーを取り付けるための電柱を立てなければいけません。 そこから路上に腕を出し、その腕に路面に向けたセンサーを取り付けます。 道路が複数の車線を持っていたりすると腕が長くなります。 台風の風や雪が積もっても揺れたり折れたりしないためには、電柱や腕はかなりしっかりとしたものにしなければならなくなります。
かくして、この日本のセンサー設置はとても高いものについてしまうのです。
それに対してアメリカの場合はどうしているか。 それは地面の方にセンサーを埋め込んでいます。
下の写真をご覧ください。 アスファルトで舗装された道路の路面には、停止線の手前の矢印の当たりに長方形を描いた黒い線が見えると思います。 これが車が居るかどうかを調べるセンサーです。
この黒い線は路面に幅1センチ、深さ 10 センチ位に掘った溝の跡です。 その溝は電線を入れるためのものです。 四角い枠状に切られた溝にはその電線がグルグル巻くように入れられています。 黒く見えているのは、その上をふさいでいるアスファルトやコールタールのフタです。
そのグルグル巻かれた電線は電気部品の 『コイル』 として働くものです。
電線を入れる溝は道路の横にまで掘られ、そこを通してコイルを形成している電線は道路わきに設置された信号機の制御箱に接続されています。
コイルにはインダクタンスという電気的特性でその個性を表現できます。 その個性はそのコイルの上に車のような金属でできたものがある時とない時では大きく変わります。 その違いを使って路上に車が居るかいないかを検知しているのがアメリカの平均的な方法です。
その変化を検知するのは超音波を使ったセンサーに比べたらとても簡単な電子回路で実現できます。 それに、この特性は車の大きさや天気などの環境の要素に影響をほとんど受けません。 素材の電線はしっかり選べば寿命は半永久的です。
皆さんは、水道やガスなんかの道路工事で、下の写真のように道路の舗装をはがす場所に、回転する円盤をつけた丸鋸の様な切断機で切り込みを入れて行くのを見たことがないでしょうか。 この電線を入れる溝もこの道具で作ります。
四角い枠は一周がせいぜい 10~20 メートルです。 そこに電線を何回か巻き入れて、その上を普通に道路を舗装する時のようにアスファルトやコールタールでふたをする。 材料費はただの電線とアスファルトだけです。 センサーのコイルは一か所作るのに、交通整理の誘導員も入れてせいぜい数人で1時間もかからないでしょう。 車線が何本もある大きな交差点でさえ、工事は夜中のような車の通行で迷惑を掛けない時間帯を使ってチャチャっと済ませることが出来ます。
頑丈な電柱も電柱を建てるための土地も要りませんし、何より道路わきに邪魔な柱を立てる必要が無いのが嬉しいもんです。
材料も工賃も安くて済むから、アメリカでは大都会からド田舎に至るまでの『ほとんど全て』の信号機にこれをつけることが出来ているのです。
そのお陰で、幹線道路とローカルな車が出入りする住宅地や商業施設の出入り口の道路との交差点などでは、ローカルな交通量が少なくなる昼間や夜間には、ローカルな車が居ない限り幹線道路側の信号はずっと青(緑)のままとなり、無駄に止められることが無く快適に走れます。
交差点によっては、このセンサーを停止線から手前(交差点から離れる方向)に少し離れたところにも設けるところがあります。 これは、赤信号で止まった車の列が長くなったことを知るためのセンサーです。 そのセンサーの位置に車が止まるほど車列が長くなると、その車線の信号を早めに青に切り替えるように信号が制御されます。
中にはそのことを知っていて、車列が長くもないのにそのセンサーの位置に車を止めたりする人が居ます。 そうすると確かに早めに信号は青に替わります。 別に法規に触れるわけではないのでお咎めはないと思いますが、ちょっとマナー違反ですね。
【横断歩道の信号】
信号機の多くは道路が交差するいわゆる交差点に立てられています。 これは交差・分岐・合流する車の流れをさばくためのものです。 それに対し、日本には横断歩道専用の信号機もあります。
日本とアメリカの道路を比べた時、この横断歩道専用信号は日本独特のように感じます。 アメリカにも道路を横断する歩行者用の押し釦のある信号機はありますが、たぶんそれは本来の交差点の信号機に組み込まれたものでしょう。 歩行者が横断するため専用と言う信号を私は見たことがありません。
日本では歩いて移動するということが多いものですが、自動車社会のアメリカではそれがほとんどないからだと思います。
そもそも、アメリカでは 『道路』 は車が走る場所で、人が歩くところではありません。 人が歩くのは 『歩道』 だけです。 まれに歩道のない道路を歩く人は居ますが、その場合、人は道路ではなく道路の脇の草むらを歩きます。
では横断する場合はどうするのか?
まぁ、それは横断歩道や歩行者用の信号のある交差点で渡ると言うのが基本ですが、そうでない場所では 『気を付けて車を避けて渡る』 と言うことになります。
それに対して最近ではアメリカでも歩行者の横断用の信号機が良く見られるようになりました。 形態はいろいろありますが、代表的なのが以下の写真のようなものです。 信号と言うより、横断歩道の標識にオマケでつけられた 『警告灯』 のようなものです。 これは、住宅地で散歩する人が良く横断する場所や、バス停なんかに設けられることが多いようです。
日本の横断歩道の歩行者専用信号の場合、車側の信号機自体は交差点の信号と変わらない『赤・黄・青』の表示灯ですが、アメリカの場合は横断歩道の標識に取り付けた黄色の点滅灯です。
最近のものは点滅灯はストロボ灯のことが多く、横断したい人がボタンを押すと 30 秒ぐらいの間 『ピカッ、ピカッ』 と閃光を発します。 これが点灯して横断歩道を横断している人が居たら、車は必ず止まらなければなりません。 しかし、人が横断しきった場合は点滅していても車は走って良いと言うものです。
日本の場合は人が渡り終えても信号が赤なら車は止まっていないといけません。 これって全く意味のないことで無駄じゃぁないですかね? それに背の高い電柱を立てて大きな信号機を立てるより、道路標識と同じ細い柱を立ててソーラー駆動のストロボ灯を点けるだけなら電気の配線も簡単で初期コストもランニングコストも安上がりです。
【中央待機車線】
アメリカでも大恐慌から第二次大戦なんかの時期(だいたい 80~100 年前)以前に作られた道路には狭いところが多いものですが、それ以降、とりわけここ半世紀以内に作られた道路はこんなコンセプトと聞いています。
道路とは車が走るところで、人は歩きません。 人が歩いていい場所は歩道だけです。 歩道は最低でも大人二人が並んで歩けるように4フィート( 1.2m )はとります。
歩道を設けるなら、車道との間に2フィート( 60cm )以上の街路樹や芝生のグリーンゾーン(Green Zone)を挟み、道路に面した建物との間にも2フィート( 60cm )以上のフロンテージ(Frontage)という空き空間を挟みます。 グリーンゾーンやフロンテージには、街路樹や電柱、標識、消火栓、郵便ポストなどはあってもいいですが、そこには勝手に塀やフェンスなどを建ててはいけません。 住宅の場合は、そのフロンテージに加えてに車1台分の長さ以上の前庭を挟むものです。 今日では、住宅に限らず、オフィスビルなどの建物でもそんな前庭を建物と歩道の間に設けるのは少なくありません。
車道の基本は、火災時の消火活動や荷の積み下ろしで道の両側に消防車やトレーラーが止まっていても、他の消防車やトレーラーが通行できることです。 そのために、幅 8.5 フィートの標準的な消防車やトレーラートラックが走れるように、1本の車線は 10 フィート( 3m )の幅で、その車線が3本はあるというのも基本です。
そんなところの中央に対面通行の2車線分の路肩を示す白線とセンターラインを書いたものが、今日のアメリカの道路の標準形と言う訳です。 住宅地の道路も基本的にはこのスタイルで作られます。
さて、そんな道路に、街の中の場合はもう一車線追加になると言うのが今日のアメリカの基本です。
それが下の写真のように道路の真ん中に設けられる 『待機車線』 です。 アメリカの道路では、センターラインはオレンジで、白線は同一方向に向かう車線を区切る線です。
右側通行のアメリカですから、車は右に白線、左にオレンジ色の線を見て走ることになります。 そして、その間の左右両方ともオレンジの線に囲まれた車線が 『待機車線』 と呼ばれるものです。
右側通行のアメリカの場合、この車線は道路の左側にある細い道路や施設に入ろうとして左折する車が、対向車線の車の流れが途切れるのを待つための車線です。 車はそれまで走ってきた車線から左の車線に入るので、左折のために止まっても後続の車を止めることがありません。
また、その道路に出てくる細い道路や、その道路に面した施設から出てきて左折しようとする車にとって、その方向に向かって右から来る車の流れが途切れない場合、それが途切れるまで待つのにもその車線は使います。 そうすることで、同じ道路や施設から出てくる他の車の通行を妨げることが無くなります。
この車線は走行用の車線ではないので、追い越しに使ったり長い距離を走ってはいけません。 道路のどちら側からも同じように使いますから正面衝突しないように気を付けて使わないといけませんが、それに注意さえすればとても便利なものです。
【4 Way Stop とランダバウト】
道路が交差・分岐・合流したりするところで、そこの交通量が多くない場合、信号機は設置されないことが多いものです。 そんなところの場合、多くの場合 『止まれ』 の標識を立てて車を一旦止めさせ、他の車と譲り合い、1台ずつ交互にそこを通るということになると思います。
そんな時には 『ラッキー』 などと言って譲り合わずに前に行った車にくっついて行ってしまう 『ちゃっかり者』 を見かけ、腹を立てたりした経験は誰にでもあると思います。 これはそこにしっかりしたルールが定義されていないからだと私は思います。
アメリカの場合、それは明確に決まっています。 それが 『4 Way Stop』 のルールです。
交差点に 『STOP』 の標識があった場合、まずは交差・分岐・合流する他の道路の方も良く見て、どの道路に同じ 『STOP』 の標識があるかを確認します。
日本の 『止まれ』 の標識は逆三角形です。 その形には以下のように 『止まれ』 以外にも 『徐行』 などのようなものがあったりします。
しかし、アメリカでは下の写真のように 『STOP』 の標識は8角形です。 この形をした標識は 『STOP』 以外にはありません。 だから 『STOP』 の標識は裏側から見ても認識できるんです。 というか、それは認識できなければならないことになっています。
この 『STOP』 の標識が掲示されている交差点の場合、『停止線のところで止まった車で出発して良いのは先着順』 です。 だから、その交差点についたら、自分はその道路に止まった車の中で何番目に止まったか、ということをサッと確認しなければなりません。
何番目かわからなかったり、順番を認識できずに止まってモタモタしていると、『お前の番だ』 と指をさされたり、パッシングやホーン(クラクション)で催促されたりします。
また、こんなことにも注意が必要です。 前述した 『ラッキー』 はないということです。
先着順で出発できるのは停止線のところに止まった車だけです。 後続の車はまだ停止線のところにまで到達していません。 なので、その車は出発の順番外なのです。
それを知らずに前の車に続いて交差点に入ると、次の優先順位の車と衝突するかもしれません。 そんな事故になった場合、後続で走ってた車は事故の全責任を負わされることになります。 なにしろ、この先着順出発のルールは法律にはっきり明記されているんですから。
この手の交差点では注意することがもうひとつあります。 交差点に向かう全ての道に 『STOP』 の標識がついているとは限らないということです。
『STOP』 の標識がついていない道路を走ってくる車は当然その交差点では止まりません。 だから、信号のない交差点で 『STOP』 の標識で止まってから交差点に入る時には、全ての方向の道路について 『STOP』 の標識の有無を把握する必要があります。
『STOP』 の標識が唯一8角形なので裏からでもそれがわかると言うのはこのためのものです。
もっとも、大抵の交差点では、下の写真のように、何方向と先着順を見ないといけないかは8角形の表示板の下に 『2 WAY』、『4 WAY』、『ALL WAY』 のように書いた板がついているものですけどね。
いずれにしても、『ラッキー』 なんて許さず、曖昧なものを排除してルールを明確にしておくことはしっかりやったた方がいいように私は思います。
そんな 『優先順位』 を考える必要もない道路の交差・分岐・合流のシステムが当地には最近増えています。 それがランダバウト(Roundabout)です。
下に示した写真のように、交差点を円周路にしてその円周路に入って周り、目的の方向に出て行くと言うものです。 すでに入って回っている車が優先です。 だから優先順位は一目瞭然です。
交通量が多くない道路・交差点なら、信号のような機械なしに結構スムーズに車をさばけます。 私が暮らす町では信号を廃止してランダバウトにしたところがここ数年でいくつもあります。
【標識の省略】
日本の道路はどこも狭く感じます。 とりわけ街の中の裏路地や住宅地の道路では建物や塀が道の際ギリギリにまで迫っているので、その狭さをなお強く感じます。
そんな道路だと標識はとても邪魔です。
そんな気持ちで街の中を眺めてみた時、たとえば制限速度や駐車禁止の標識って 『必要なんでしょうかね?』 と思うことってありませんか?
それに対し、例えば私が暮らして居るアメリカの田舎町ではこんなことをしています。 下の写真に示したような標識(看板)を町に入って来る全ての道路に掲示しているんです。 そう、『特に断りが無ければ、全ての市内の道路は制限速度が 35 マイル(約 55 キロ)です』と。
これがあるので町の中には制限速度の標識がありません。 じゃぁ町の中に住んでる人はわからないじゃないかって? いえいえ、町の人はみんな知ってますから大丈夫です。
ちなみに、『特に断りがない限り、町の中の道路は全て駐車禁止です』という標識と『市内では歩行者に注意すること』という標識もこの先に掲示されています。 先述したように、アメリカでは道路を歩行者が歩くことは普通は無いのですが、『この町ではそれがあるかもしれない』ので注意を喚起しているのです。
標識が分かれているのは、一瞬で読める文字数には限りがあるためでしょう。 これがあるお陰で、町の中に掲示されている交通標識は少なくなっています。 その結果、その標識が 『目立つ』 ので、その掲示の効果が高くなるといういい効果が出ています。
標識は出せばいいんじゃないと思います。 必要なものだけを効果的に掲示することが良いように思います。
国が違うと人が違い、人が違うと文化が異なり、文化が異なると考え方や価値観が変わります。 するといろいろな物事に対する対応の仕方が変わります。 その中には役に立つものもあったりします。 そんなことから私が感じてきた日本との違いを紹介してみました。 何かお役に立てば幸いです。