フィンランド語はヨーロッパで使われるほとんどの言語と親戚関係にありません。もっとも近いのはハンガリー語ですが、これもヨーロッパでは孤高の言語です。ヨーロッパ内にも多くの語族がありますが、スペインからロシアまでの広範囲にわたって使われているほぼすべての言語は「インド・ヨーロッパ祖語」と言語学者が呼ぶ言語から枝分かれして成立したものです。このような背景があるので多くの共通点、たとえば1から100までの数え方や「母」や「父」などには似たような語彙が使われているのです。
さて、この言語は数千年前に馬に乗って旅する商人たちによって広まったとされていますが、ギリシャ語やラテン語、古代ケルト語などの古典ヨーロッパ言語にも影響を与えました。遠くはインド、アフリカの一部まで影響が認められています。
対して、フィンランド語やハンガリー語はより最近になって成立した言語です。知られている限りでは1,500年前にこの地に流れ着いたアジア系の遊牧民族とともにやって来たとみられています。フィンランドでこの部族は現地の男性を皆殺しにし、女性のみを保護したとされています。
というわけで、フィンランド語はインド・ヨーロッパ語族の系譜に連なる言語ではありません。他のあらゆるヨーロッパ圏の言語よりモンゴル語に似ています。以上の理由で基本的な語彙はほぼすべてのヨーロッパ圏の言葉と異なるのです。
ハンガリー語にも近くありません。
外来語をそのまま取り入れることさえしません。
良い例があります。ラテン語と古代ゲルマン語とで分かれた言葉があります。英語はなぜかラテン語を引き継ぎましたが、フィンランドはそうはいきません。
これは他のヨーロッパ言語と構造が大幅に違うからです。フィンランド語は膠着語(形態素を付着させることにより文法関係を示す言語)の一つで、目が回るような14の異なる名詞の基本形があります(名詞形を用いて、英語だったら前置詞にあたる意味を示すからです)。
ドイツ語とはまた違った理由でフィンランド語では長い単語が形成されます。ドイツ語では名詞や形容詞をつなげて新しい名詞を作り出しますが、フィンランド語は違います。彼らは名詞、動詞、形容詞、前置詞まで一緒くたに盛り込むのです。