小学2年生の時に九州から北海道に引っ越しました。九州に住んでいた頃に親から「学校によって授業のスピードが違う。北海道は田舎だから九州よりもスピードが遅い。授業も遅れているだろう」と聞かされていました。今考えると九州も田舎だろって話なんですが僕は親の言うことを鵜呑みにして「北海道って遅れてるぅ」と思い込んでしまいました。
転校初日。
北海道で初めて受けた算数の授業は九九を一人ずつ言っていくという授業内容でした。そしてこれには心底焦りました。
なぜなら僕が通っていた九州の学校では九九はまだ1の段すらやっていなかったからです。そうです。僕の通っていた九州の学校は授業のスピードが恐ろしく遅い学校だったのです(今考えると学級崩壊してたような。。。)。
転校初日という大舞台でいきなり恥をかくわけにはいかないという焦りから滝のような汗をかいている僕とは違い、生徒たちは出席番号順に立ち上がり九九をスラスラと言い始めました。僕の順番は4番目でした。
1番目の生徒が九九を言っている間、僕はパニック状態でした。親に対する怒りで少しべそをかいていたように思います。
2番目の生徒が九九を言っている間、この方法を打開する術を必死で考え始めました。自分の番が来たらトイレと言って席を立つ等々考えましたがどれも誤魔化しきれないと判断し8の段辺りで腹を括りました。
3番目の生徒が九九を言っている間、出来うる限り内容を記憶しようとしました。ですがリズム良くスラスラと暗唱される九九を覚えるのは困難でした。2の段が終わる頃には心が折れました。ににんがし、ってなんだよ!北海道の方言か!?と本気で思いました。
と、突然天啓が降りてきました。
3の段である法則に気付いたのです。
あれ?これただ答えに3を足していってるだけじゃないか?
4の段は暗算が追いつきませんでしたが5の段は非常にわかりやすくここで確信しました。前の答えの足し算し続ければ覚えてなくても全部言えると。8の段では試しに頭の中でやってみました。答えは全て合致していました。
あの時の発見の感動は今でも覚えています。感動で全身に鳥肌が立つという経験をしたのもあの時が初めてです。
残るは九九の独特な言い回しだけです。ににんがし、はっぱろくじゅうしといった言い回しはさすがに覚えないと無理です。
いよいよ僕の番になりました。僕は慌てて先生に言いました。
「すいません、九州では1×1は1、1×2は2みたいな言い方をしてたのでそれで言ってもいいですか?」
「 ににんがし」を北海道の方言だと思っていた僕は土地が違うので言い方が違うという論法で逃げ切ろうとしました。果たして先生がどう思ったのかは分かりませんがそれでオッケーが出て僕はなんとか九九を全て暗唱出来ました。
というわけで
3人が九九を暗唱している間に九九のメカニズムを解き明かしてさも知っていたかのように全部正答したのが僕の密かな自慢です。
ここから得た教訓は
人間は追い詰められるととんでもない力を発揮することがあるということです。