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リクエストありがとうございます。

まずUIUXデザイン(よく見かけるのはUI/UXのようにスラッシュつなぎ)というデザインは、厳密にはありません。UIデザインとUXデザインという別々のデザインがあり、それぞれにデザイナーがいます。

ただUIとUXは密接な関係にありますし、一人で両方ができるデザイナー、特にUXデザイナーがUIデザインもできる(UIデザイナーが「体験」の重要性に触発されUXデザイナーになる)ことが多いと思われ、いつからか一緒くたに語られることが増えました。

Webデザイン、IT、アプリ開発などのデジタルプロダクトが増え、UIとUXを同一のデザイナーやエンジニアが扱うことがあるのも一因かと思います。


さて、UIとUXのデザイナーの仕事が別々であることを前置きしたうえで、それぞれの仕事について具体的にお話しします。ここで文章ですべてを語る事は難しいですが、できる限り説明してみます。

UIデザイナーの仕事

UI = User Interface ユーザーインターフェースをデザインします。

UIとは、ITやアプリの文脈でいうと、目的を果たすコンピューター(最近だとスマホ)と人間の間に入って、目的の指示を簡単、確実にできるよう補助するもののことです。

スマホアプリでいえば、

  • 文章での言葉づかい(テキストルール)
  • ボタンや入力フォームなどの大きさや形、色といったUI外観(シェイプ)
  • イラストやアイコン、写真といったグラフィック
  • 各UIの画面内での配置(UIのレイアウト)
  • UIに触れたときの反応(モーション、アニメーション)

といった項目を設計することが基本としてあり、より高度になると

  • 文字のパターン制限と使用ルール(文字種類や太さ、いわゆるフォントの選定と文字サイズの限定)
  • 色の意味づけと、意味に則ったUIへの色使用
  • 画面そのもののレイアウトパターン化(1カラム、2カラム、余白あり、余白なし幅100%など)
  • UIを操作したときに、何らかの意味を伝えるやや複雑な一連の動き(インタラクション)
  • UIをパターン化したコンポーネント管理(ラベル、ボタン、)

といったように、UIをパターン化、構造化して一貫性、再利用性、エンジニアリングとの連携などを深めていきます。


UXデザイナーの仕事

UX = User eXperience ユーザーエクスペリエンスがより心地よく感じられるように(あるいは「ひどい!」と思われないように)体験の流れをつくるデザインです。

UXとはユーザーの経験・体験であり、体験そのものをデザインはできない、と認識しておく必要があります。(デザイナーがユーザーを操るわけではないので笑)

以上を前置きした上で、具体的になにをするかというと多岐に渡りますが、以下のような試みを行います。

  • 現状の問題を机上で洗い出してみる
    • デスクリサーチ(ググったり、口コミを収集)する
    • ユーザーは誰なのか見極める
    • いま考えられる問題を洗い出す
    • 簡単な仮説を立てる
    • あえて前提知識を入れないメンバーもおく
  • サービスを実際に体験する
    • 現場に行く
      • 会議室で検討ではなく店舗へ
      • 会議室ではなく会場へ
      • 会議室ではなく実業務してみる
      • 会議室ではなく乗り物に乗ってみる
      • 会議室ではなく…
    • 大まかなタイムライン(時間順に起きるイベント)を洗い出す
    • 詳細なタッチポイント(ユーザーが接触するヒト・モノ・コト)を洗い出す
    • ユーザープロファイル作成
  • 細かな体験の流れを可視化する
    • 体験したタイムラインをジャーニーマップに付箋で貼る
    • 体験したタッチポイントをジャーニーマップに付箋で貼る
    • それぞれで感じた感情を付箋で貼る
  • 現状の問題を発見、整理する
    • ユーザーヒアリング
    • 体験前に立てた仮説を検証する(違っていたら修正)
  • アイデア出し
    • 問題を解決するアイデアをたくさん出す
    • ディスカッションして創発する
  • プロトタイピング
    • アイデアを試作する
      • デジタルプロダクトはペーパープロト(手描きの画面遷移)、Adobe Xd, Sketch + InVision, Protopieなど
      • フィジカルプロダクトはペーパーモック、3Dプリント、xR(3Dオブジェクトや空間デザイン)など
  • リリースと評価
    • 事前に定めた評価基準を達成しているか(割り込んでいないか)を定期チェック

今回のご質問は「具体的に何をする仕事なのか」でしたので具体的な作業を中心に解説しましたが、UXデザイナーには上記を行うに到る思考、姿勢のようなものがあります。

  • ユーザー体験は製品開発の会議室で起きているのではない、現場で起きている
    → だから現地に足を運び、自分の目で見て、1ユーザーとして体験することが必須
  • ユーザーの(というか人の)認知能力には限界がある
    → 一度にたくさんのことを伝えても伝わらないし、開発側が思うような順番を辿って理解してくれる保証もない
  • 別々の部署、別々の制作物やサービスを一箇所に集めても1つの、というより一体のサービスにはならない
    → 別々に作られたものを1つの流れにつなぎ合わせる人が必要
  • 開発側は冷静に「こういう機能を追加すれば満足してくれる」「説明を書けば使い方を理解してくれる」と機能的に考えがちだが、ユーザー側からすると「また訳の分からない追加でいつも使う機能がどんどん選びづらくなる…」「新機能にしても説明読んでも意味わからねー!(怒)」と、いま気に入っている機能を大切にしてほしかったり、もっと感覚的にジャッジしている

UIデザインとUXデザインの具体的な仕事については以上です。

UIデザインとUXデザインをさらに内包する「サービスデザイン」の観点からの投稿もありますので、ご興味があればあわせてご覧ください。

UI/UXデザイナーはプロダクトのデザイン時にのみ外注すれば済むから、正規雇用をしないという人がいましたが、賛成ですか?に対する塩川まこと (Makoto)さんの回答

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