さあ、がっつり書くぞー。
主流は難しいかもしれません。まず、なぜ既存の1画面スマホが人々に受け入れられたのかを考えてみましょう。
ガラケーからスマートフォンへの移行がスムーズだった大きな理由のひとつに「形状」があります。つまり「片手で握れる縦長のカタチ」です。
人々がコンピュータデバイスの中でも特に「携帯電話」を好むのは、ポケットから出して片手で握って使える、その手軽な形状とサイズ感にあると思います。初代 iPhone を起点とする既存のスマホでも、その(いかにも携帯電話らしい)縦長のカタチは維持されました。
そして人間には「もっともっと」という飽くなき欲があるので、その「片手で握れるカタチ」の中でもっといろんなことができれば、なお良いことです。物理キーを取り払った「全面タッチスクリーン」と「アプリシステム」の組み合わせは、その欲求に見事に応えるものでした。
2012 年頃から現在に至る大画面化も、その人々の内なる欲求に呼応した現象と言えるでしょう。つまり片手で握れるギリギリのサイズまでスクリーンは拡大していったのです。スマホの2画面化も、この大画面化の続きと言えます。
しかし、ここで「形状」における事情が変わってきます。
2画面=折りたたみ型を意味するわけですが、この入り組んだ形状は、端末の操作プロセスにおける「片手で握れる」の部分を壊してしまうのです。片手で握ったままの状態を維持できなくなります。
ガラケーも折りたたみ型でしたが、縦方向に開閉するので、端末を握った状態は維持できました。ところが2画面スマホの場合、もう一つのスクリーンが"横方向"に加わります。握っている部分の幅が変わってしまうわけです。
こうなるとほぼ「両手持ち」を強制されるわけで、携帯電話ならではの物理的な使い勝手は減じてしまいます。面倒くさくなるということです。LG 型だろうと GALAXY Fold 型だろうと Surface Duo 型だろうと関係ありません。iPhone 型より面倒くさくなります。
(Wall Street Journalの動画より
)この手と端末の付き合い具合の変化が、従来型スマホと2画面スマホを分かつ大きな分水嶺になるのではないかと思います。(でも手帳型ケースの普及を考えると心理的ハードルは意外と高くない?)
いわゆる「2画面スマホ」でいい線をいっているのは、Surface Duo 一択だと僕は考えています。
スクリーン比率、1画面4:3、2画面3:2、これは合理的です。マルチ・コンピュータ・デバイスとして、消費/生産、縦向き/横向き、様々な用途で使うなら黄金比に近い比率のほうが効果的だからです。
よって Duo は形状的に、生産志向デバイスであることがわかります。2画面スマホというより、iPad mini のようなミニタブレットを折りたたみ型にして通話機能を加え、スマホに近づけたものと捉えたほうがいいでしょう。Surface チームの長、Panos Panay もスマホの再発明を意図したものではないと言っています。
つまり立ち位置としてはスマホとミニタブレットの間。スマホ< Duo < iPad mini。サイズ変化の方向性として、Duo は「タブレット -> スマホ」、GALAXY Fold は「スマホ -> タブレット」という向きでたどり着いた形と考えるのが妥当だと思います。
しかも合計 8.1 インチなので mini より大きい画面になります。ただ真ん中が分離しているので、Duo は2画面使い分け主軸として捉えたほうが良さそうです(つまり大画面のコンテンツ消費用途を求めないほうがよい)。
ここからわかるのは、Duo は「携帯電話機でもっと生産的なことをしたい人たち向け」の端末だということです。片手持ちの使い勝手を多少犠牲にしてでも、もっと本格的に生産作業やインプット作業をしたい人たちは Duo に流れていくと推測できます(あとは OS やアプリの完成度と価格の問題)。
過去の回答(iPad Proが折り畳み式になったら最強だと思いませんか?)で 、Surface Neo(のような2画面タブレット)の弱点について「重量が増えるので取り回しが悪化する」を挙げましたが、小さな Duo の場合、このデメリットはなくなります。250g しかなく、じゅうぶん軽い300g の iPad mini よりもさらに軽いからです。
つまり重さを気にする必要がないので、2画面や 360 度ヒンジの機能性をストレートに享受できるということです。
本体もかなり薄く仕上がっており、片面の厚みはたった4.8mm。iPad Pro(5.1mm)より薄いです。ヒンジが 360 度回転する仕様上、カメラレンズを出っ張らせることは難しいので、今後もDuo に高画質カメラは期待しないほうがいいと思われます。
優れたデザインほど「なぜそうでなければならないのか」に対する答えが、製品そのものから返ってきます。製品がちゃんと語ってきます。作り手の思想や哲学がしっかりしているからです。一世代目にしては、Duo の端末デザインの完成度は高いと言えます。
一方の Galaxy Z Fold 2 は消費志向の変態ガジェットにしか見えません。
ここからは Duo の方向性についての妄想と叱責です。
Duo の形状、どこかで見たことあるなぁと思ったんですが、モレスキンのノートブックにそっくりです。
サイズといい形といい、まんま手帳ですね。というわけで僕がプロジェクトリーダーだったら、Surface Duoを「手帳界の覇者」にさせる方向を真剣に目指すと思います。
スマホやタブレットがここまで普及し、アプリが充実して OS やスタイラスの完成度が高まってもなお、「紙の手帳」は世界中で根強く愛され続けています。そこに着目し、世界中の手帳ユーザーを Duo に移行させることを考えます。老若男女問わず手帳ユーザーたちを魅了するような携帯端末に仕立て上げるのです。手帳2.0みたいな。
現行のスマホ、アプリ、OS では置き換えることのできない手帳の魅力はなんだろうか。ここを深く掘り下げていきます。目標は、あらゆる点で「紙の手帳」に劣らないこと。
Android をそのまま乗せるのではなくカスタムOS(できれば WP 系)を採用し、独自の使いやすい流暢な GUI を細部までデザインできるようにします。わかりやすく言えば、Kindle とか reMarkable とか、そっち系です。自社 OS にしないと自社ペースで改良していけません。
ペン入力、OneNote、カレンダー、リマインダー、メモ、メールといった"基礎"を特に重要視し、それらをこれまでにないような使い心地へ昇華させるべく徹底的に作り込みます(特にカレンダーは改革が必要)。Apple 製品でも体験できないような、かつて電子機器で実現されたことがないような高度なものを。
紙の手帳はライバルでありつつも、敵視するのではなく敬意をもって研究します。そこから得られた知見を Software/Hardware デザインに落とし込むというわけです。文具メーカーを買収してもいいかもしれない。
ちょうど文庫本サイズ(A6判)なので、読書体験にも徹底的に力を入れるべきでしょう。Amazon と手を組んで専用プランを立ち上げたり、書籍リーダーの使い心地なんやかんや。ユーザー層は生産志向かつ知的な人たちに照準を合わせたほうが効果的だと思います。プレミアム路線というのは高価格や品質だけでなく、ユーザーの質の高さも大切だからです。
そしてこの新生 OS 開発から得られたノウハウや技術を "Back to the Windows10" として還元していけば、エコシステムに良い化学反応を起こせるはずです。
ホーム画面には Windows Phone のベースだった「タイルUI」を採用し、差別化を図ったほうがいいでしょう。アプリアイコンとウィジェットが融合したサイズ可変の動的なタイル UI は明らかに先進的で、このモバイル全盛の時代に発展させないといけない UI パラダイムでした。
これがいかに重要なことか、MS 自身は理解できなかったようです。
開発が中止された Windows Phone の大きな問題はアプリの欠如だったんですが、実は OS そのものはユーザーからの評価が高く、今でも根強く支持されています。
(例えばこの Duo レビュー動画のコメント欄では WP の評判がすこぶる良く、あるコメントには2600以上のいいねが付いています。)
ちなみに後継の Windows10 mobile は2019年12月にサポートを終了しました。
要するに僕が言いたいのは、この新たな form factor に力強い躍進エネルギーを与えるには、優れたハードだけじゃ足りないということです。「Android プラットフォームに MS 製アプリの組み合わせはGood」という意見もあったりしますが、ちゃんと OS から統合的にデザインしきる必要があります。じゃないとユーザー体験の構築が頭打ちします。
MS の戦略としては、Surface プロダクトで在るべき姿を示し、他メーカーにも似たものを作らせて新たな潮流を生み出しモバイル業界を活性化させる、というものかもしれません。が、ハードウェアがいくらユニークでも"ただの Android 端末"でしかない。
もう Android 端末を多様化してもしゃーないんですよ。人々の生活は大して改善しないからです。
あちこちのレビューを見ても、おかしな挙動をしたりスワイプアップが反応しない動作がぎこちないとか、素人くさいバグまみれの buggy / laggy な出来映えのようです。(Apple だったらこんな状態で世に出さない。)アプリ間の画像ドラッグさえできないとのこと。
ちなみにSamsung や LG は論外です。ハードメーカーが form factor を前進させることはできないからです。ハードメーカーが大きな役目を果たすとすれば、新たな form factor をコピって世界中に(低価格で)普及させることです。
Duo の場合はWindows という心強い後ろ盾があるので、それを母艦とする新たなモバイル体験を提案していけばいいと思います。つまり「アプリの充実」如何を度外視する独自カスタム OS 路線に挑戦できる理由をもっているということです。その成功確率を上げるには「目的/コンセプト」という思想面と「端末デザイン」という足場が物を言います(後者はできてる)。
Windows95 の普及から25年、Windows Mobile から17年、iPhone の登場から13年、Windows Phone 8 から8年、Windows10 mobile から5年。IT専業の巨人、Windowsの生みの親は、何を今さら"ただの Android 端末"なんか作っているのか。しかもバグだらけの。
この二周三周まわって何も残ってない感じ、まずくないですか?orz
脚注