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現在の、雇われる立場としての職業上の細かな事情(年収や社内ポジション、仕事内容など)のことはわかりませんが、テクノロジーの今後の発展を考えれば、UIデザイナーの需要は今後よりいっそう増してくると思います。

UIデザイナーを必要とする企業が増えるかどうか以前に、市場そのものが「ユーザーインターフェイスをデザインできる人間」の潜在的需要を拡大させていくということです。

UIデザインというと、一般的にアプリとかWebサイト、何かしらのコントロールパネルやリモコンをイメージされるかと思いますが、今後は「ホログラム」も加わってくるはずです。

ここでホログラムの必要性について考察してみましょう。


冷静に観察してみるとわかりますが、現在普及しているデジタル世界というのはすべて平面的(2D)です。GUIだろうとARだろうとSF映画のCGだろうと、すべては「物理的に平らなスクリーン」の中で表現されるだけです(あるいは壁面に投影)。この仕様にはいろいろと問題が根付いています。

1)まず、特にコンピュータデバイスの利用においては、近距離で平面ディスプレイを見続けるので視力は低下しやすくなります。調節異常というやつです。

2)人間の眼がもつ能力を十分に活かすことができません。

人間の2つの眼球それぞれの視野角は、垂直方向:約135°、水平方向:約160°なんですが、現在のスクリーンの視野角は約40°しかなく、とてつもなく狭いです。(自分の目の視界と、FPSゲームの視界を比べてみてください)。眼の視覚能力において「高精細な中心視野」にもっとも寄与しているのは中心窩で、その視野角は1~2°しかないのですが、網膜のそれ以外の部分は「ものの動きや変化」に非常に過敏に反応できる知覚力をもっています。現代のスクリーン環境では後者の知覚能力はほとんど発揮されておらず、致命的な状況にあります。

3)データやコンテンツの「隠れてしまう」問題が非常に根深いです。

そのコンテンツが視界(画面上)に表示されるには、スクロールしたり、ウインドウを手前に持ってきたり、フォルダの階層を進んだり、アプリを開いて何度もタップしたり、検索してリストにアップさせるといった操作が要求されます。これは2D世界と、スクリーンという狭い表示領域の制約によるものです。

一方のホログラムであれば、例えば部屋の本棚に、ホログラム状の書物が立て掛けられているとします。これをタッチすると、手元のタブレットでその本を読み始めることができます。既存のKindleアプリと異なるのは、自分はどの書籍をもっているかを、生活空間の中で物理的に見渡して手軽に認識できるという点です。「物体として認知する」というアナログのメリットが、データアクセスの敷居を大幅に下げてくれるわけです。

Kindle内のライブラリー/リストは普段「隠れている」ので、端末をONにしてアプリを開いてスクロールしてチェックしない限り、その本の存在を認知しない=存在自体を忘れやすくなる=持続的把握が難しい、ということです。

4)3の発展形ですが、プログラミングにとてつもない支障をきたしています。

現代のソフトウェア開発を脆弱にしていることの一つは、プログラムの構造や処理フローを立体的に再現できないことだと思います。プログラムらしい実体といえば、コードという名の「テキストの羅列」やモジュール群、それを支えるフォルダ階層くらいで、すべて平面的です。しかも無数のファイルがあるので何度も何度もクリックして切り替えねばなりません。まるで膨大な書類を都度一枚一枚デスクに広げて読み通しているような、きわめて原始的で効率の悪い作業です。これが、バグやエラーの原因特定を本質的に困難なものにしています。プログラム群の繋がりや(リアルタイムの)処理フローが立体構造として見えないからです。

複雑なプログラム群が実際にどんな立体的構造となっているかは、コードやモジュールなどから解釈・抽出した"意味"を人間が頭の中でイメージするのみで、「ソフトウェア内部ありのままの立体構造」を視覚的に他者と共有するのは現代技術では不可能です。


これらの問題を解決するためにホログラム技術の発達と普及は不可欠であり、実現できるかどうかではなく、実現させなければならないと思います。しかし現時点ですでに、ARやTangible User InterfaceLeap MotionやMagic Leapといったテクノロジーの存在が、完璧なホログラム実現の未来を暗示しています。

そしてホログラム(デジタルの物体化)は、UIデサインの可能性を必ず押し広げます。結果、UIデザイナーが活躍する場は自ずと広がっていくことになると思います。

参考として、この画像は2016年4月に撮影されたMagic Leapテクノロジーです。

言うまでもなく、ホログラム技術があればゲームの臨場感も飛躍します。

https://youtu.be/kPMHcanq0xM

https://youtu.be/K5246156rcQ

製品開発や研究にホログラムを利用するとどんな感じになるのか。映画『アイアンマン』シリーズが参考になります。

ホログラム技術が十分に発達している場合、ユーザーインターフェイスは究極的には工業製品そのものになり得ます(それが有用かどうかは別として)。

ここにUIデザイナーの潜在的な需要、将来性の高さ、本質的な重要性があると思います。

ただしこの「UI = 工業製品」はホログラムに限った話ではなく、現代のタッチスクリーンデバイスどころか、1970年代に「GUI」が登場したときから始まっていました。例えば物理的には同じノートブック型パソコンでも、中身が Windows か macOS かで操作感や印象は大きく変わります。これは「目の前にある知覚できるものが、その人にとってのコンピュータである」からです。コンピュータの本質はシミュレーション能力であり、使用者から見ればその比重がもっとも大きいのは GUI です。前面タッチスクリーンでその度合いはさらに強まりました。

次の画像はホログラムではなく、光るファンの高速回転によって時計を表現する既製品ですが、「ああこんな感じなんだな」というイメージとして参考になります。

つまり、ゆくゆくはプロダクトデザイナーとUIデザイナーは融合する運命にあるということです。

これについては、エジプトのプロダクトデザイナーAbdelrahman Shaapanさんの手によるGoogle Nest Clockコンセプトがわかりやすいです。

Bang&OlufsenのBeosound5なんかは、工業デザインとGUIデザインが完全に一体化しています。

工業製品のソフトウェアの帯域幅が広がってくると、工業デザイナーも結局、GUIデザインを避けることはできなくなります。もっと言えば、ソフトウェアに対する感性や、ハードウェアと調和させる感性も要求されてきます。これはUIデザイナーも同様。

長期的な活躍を考慮するなら、職業上の区分よりも統合的なセンスや技術の獲得のほうが重要なんじゃないでしょうか。プログラマーの年収や将来性はよく議論されますけど、UIデザイナーのことってあまり触れられないような気がします。盲点ですね。(QuoraでもUI/UXデザイナー系は回答数が全体的に少ないです。一質問あたり1〜3個くらい。日本のこの現状すでにまずくないですか?)

ソフトウェアの潜在的な底力は、現行のタッチスクリーンを超えてまだまだ湧き出てきます。そんなわけで僕はホログラム全盛時代を見据え、今のうちからUIデザインやソフトウェア開発のノウハウ/センスを地道に養っていってる次第です。

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