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概 要
天体物理学上の大発見の基礎になったIa型超新星の観測結果から、「遠方の宇宙空間が加速膨張しているのではないか?」という発表がなされた。
しかし、そもそも機序が解らないダークエネルギーの設定などに疑問が提示されている。
そこで、4次元宇宙の中を光速で膨張する膜宇宙の中に3次元宇宙を想定し、空間の曲率によるレンズ効果を生じるとい仮定の下で解析したところ、観測事実を裏付ける計算結果を得た。

 本当に加速膨張しているのか

図1は、Ia型超新星の観測結果を横軸に赤方偏移(z)、縦軸に銀河までの距離の対数を表す見かけの等級(mB)をとり、グラフにしたものです。

一番下の実線は、近傍の星のハッブル定数に基づく定常的な膨張を、赤方偏移zと光度mbで表しています。

図1

近傍での赤方偏移zから予測した値より、遠方のIa型超新星の光度(赤い点)が1等級分(0.3~0.5倍)程度暗く観測されている。(1等級分で約2.5倍、数値が大きいほど暗い。)

過去の膨張速度は遅かったので、遠方のIa型超新星を含む銀河の赤方偏移zが小さく観測されたとして、遠くの観測値の多くが図1の実線より上に来ているのは、宇宙膨張の「加速」 をあらわす発見だとして、ノーベル賞が与えられました。

つまり、主流の宇宙論では、遠方(=昔)の膨張速度は、近傍(=現在)の膨張速度より小さかったので、遠方(=過去)にある銀河の赤方偏移zが小さく観測された結果、赤い点が左に寄ったのだと解釈しています。

この解釈が正しいのでしょうか?
加速膨張をするにしてもダークマターやダークエネルギーなどを導入するのは付け焼刃的であり、発動するメカニズムにも疑問があります。

2 宇宙論の比較

主流の宇宙論と4次元宇宙論の比較をします。

(1)主流の宇宙論
・ビッグバンで物質が出現したとしているが、一点から宇宙全体の物質が出現したとすること自体に無理がある。

・ビッグバンで始まったとする宇宙は、爆発の先端が光速に達していた場合、地球がその中心に存在しない限り、宇宙が等方に見えるようにはならない。

・地球が宇宙の中心でない場合、観測可能な宇宙の外側にも均等に物質が存在する必要があるが、そうすると爆発の先端は軽く光速を超えていることになり、相対論を無視することになる。

・空間自体が膨張するので、相対論の光速を超えられないとする制限は受けないとしているが、3次元空間の爆発では空間自体が膨張する根拠にならない。

・ビッグバン直後にインフレーションが起こったから、観測外の空間にも同質の宇宙が広っていると説明しているが、慣性の法則、あるいは、ハッブル定数に基づく定速の膨張とは物理的なあるいは幾何的な無理を生じる。

・Ia型超新星の観測結果に基づき、加速膨張しているとされたが、インフレーションの場合と同様に慣性の法則を超越する必要があり、ダークエネルギーなるものが提唱されたが、機序が不明である。

・光速もしくは光速に近い速度で遠ざかる物体は、ローレンツ変換により視線方向の長さが短く見えることになると解釈されているが、当該物体の長さは元のままであることから、虚空間を想定する必要があるが、主流の宇宙論では取り入れていない。

・銀河の回転問題として、形状をほぼ保ったままゆるく巻き込みながら銀河が回転していることが観測されているが、全体が同程度の角速度で回転する理由を説明するために、見えない物質ダークマターが提唱されたが、現在は否定的であり、納得できる説明がなされていない。

・135億光年かなたに、ビッグバン後わずか3億年の宇宙に明るく巨大な天体が発見されたが、主流の宇宙論では説明が付けられていない。

・宇宙背景輻射を精密に計測し、宇宙の曲率が0±0.4%であるから、宇宙は平坦であるとの結論を出しているが、等方なだけであり、曲率を算出できる計測なのか、考え方に疑問がある。

・アインシュタイン博士らの当初の宇宙モデルは、図2aのような膨らむ風船の表面に銀河が描かれており、4次元宇宙を前提としていたと推定される。

これに対して、近年の膨張宇宙モデルは、図2bに示すように内部に銀河が描かれている。

3次元空間の膨張を表すこと自体には、間違いとは言えず、これは単なる表現手段の相違とも解釈し得るが、全体を描き表すと定速膨張とは明らかに幾何的な無理がある。

図2a

図2b

(2) 4次元宇宙論の宇宙

アインシュタイン博士らの当初の宇宙モデルである膨張する風船宇宙は、4次元をイメージしていたか否か分かりませんが、閉じた宇宙を想像し易いように、図2cを作図してみました。

ビッグバン宇宙の膨張は、当初風船でたとえられていましたが、そのとおり中は過去に居た空間であり、外側は未来に行く空間だと解釈できます。(当初の風船の説明が否定されたのであれば、その理由が知りたいです。)

4次元空間を2次元の画像で表すことが困難であるため、3次元空間のうち1つの空間次元だけを取り出して、図2cのように表しています。

図2c

図2cの現在の地球の位置から接線方向が、3次元空間の1つの次元軸を表しています。
接線方向は、円周に沿って曲がっていきますが、我々には直進していると認識します。
(曲がっていることは認識できません。)
4次元宇宙論は、空間が実は4次元であり、その内の1つの次元は、我々には認識できない次元であると考えます。
円周上(球面に拡張すれば球面上)が我々の宇宙を表しています。
外側の円は、「現在の地球」から見た視線方向です。
中心にビッグバンがあり、放射状に光速で宇宙が広がっていく膜宇宙であることを表しています。
残りの2つの空間次元についても、同じ図2cで表すことができます。
時間とともに図2cの半径方向に宇宙が膨張し、円周=視線方向の距離が増大していることを表しています。

ハッブル定数H=70km/s/Mpcから計算される宇宙の半径(138億光年)
ハッブル定数Hから、1億年間に増加する距離Δdは、
Δd=70km/s/Mpc×3600×24×365.24×1億年=0.0071588Mpc/億年/Mpc
逆数にすると、1/Δd=1/0.007588=139.9億年となるので、ビッグバン宇宙論の数値とほぼ一致しています。

1点から始まり、4次元空間の中で、半径方向に光速で膨張していると考えることができます。

内部の3次元空間の物質の密度が低下し、宇宙が晴れ上がったときに発した光が、赤方偏移して、宇宙の背景輻射として観測されていると考えます。

「光の速さは座標系によらず一定である」という特殊相対論の要請を満たす座標変換=ローレンツ変換によると、光速で移動する物体の長さが”0”になるが、その物体の座標系ではちゃんと長さがあるのであるから、虚数軸の方向(現在の地球において縦方向)になっていると考えるわけです。

広大な宇宙を地球から離れる程、徐々に虚数空間に入っていくという解釈です。
遠くの宇宙では、空間軸と虚空間軸とが、徐々に入れ替わっていると考えます。

このことを図2dの地球に例えば、地球上の「北極における上下方向は、赤道上では南北方向」です。
北極から赤道まで移動すると、「上下方向」だったものが、「南北方向」に変わってしまったことになります。

図2d

我々には光速で移動している半径方向の軸は、空間として認識することはできないという設定です。

光速で宇宙が広がっていく膜宇宙は、質量が多く集まった場所では、半径方向の進行速度が僅かに低下し、さらに多くの質量が集まってくるという引力の説明に使える可能性があります。

3 4次元宇宙論に対する指摘
(1)10/23

以下のご指摘をいただきました。
・3次元の空間は4次元に含まれるので、ことさら4次元空間を強調する必要はない。
・ローレンツ変換により長距離ほど時間と空間軸が入れ替わるは、勘違いをしている。Etc

(2) 10/24
以下のご指摘を受けました。
・ローレンツ変換で時間と空間軸が入れ替わることはなく、遠方ほど光の赤方偏移が減少することもない。
・宇宙は、膨張しているが、平坦で縁がなくそれでいて有限の大きさである前提です。
・空間が曲がっているという思いは、初心者が理解しやすいように考案された風船モデルの悪しき結果です。
・Ia型超新星の観測結果の赤方偏移図は、宇宙の近傍であり、相対論的効果が現れる距離ではない。etc.

(3)10/27~
・4次元宇宙は、時間軸を含むものなのか否か。
時間を図に入れるならば、光円錐または、💧型の宇宙図になるが、時間と距離が置き換わるのは疑問。
ローレンツ変換によって波長が短縮され、遠くでそれが起こったとしても、その光が地球に届いたとしたら、観測地点と同じ慣性系になるのでローレンツ変換の変化は感じられないはず。
(返答)
4次元宇宙の次元は、全て空間軸であり、時間軸は含まない。
時間軸ではないが、光跡図を作成することは可能であり、図3aを作成し提示。
光跡は、オレンジ色の線になります。
過去に行くほど、波長の延びが大きくなり、発光源までの光跡が中心部にぐるぐると巻き込んで行きます。
図3a

ローレンツ変換の影響が最大となる地点を超えて光が届く図になったことから、ローレンツ変換の影響は無いと解釈することにした。(偏光板2枚を直交配置すると光の透過は無いが、間に45度の偏光板を挿入すると、光が透過するように、徐々に虚空間に移行する場合は、ローレンツ変換の影響が生じない解釈を採用。)

・Ia型超新星観測結果の解釈
Ia型超新星の「加速膨張」に見える原因が、どの様な理由で「宇宙の曲率」に結び付くのか不明。
(返答)
Ia型超新星の観測結果について、平坦な宇宙論では、宇宙が再加速していると解釈しているが、4次元宇宙論では、宇宙が4次元球面上の膨張する膜となるため、球表面に沿って光が伝播すると説明しています。

図3aに示すような平面伝搬では、半径rの平面の円を考えて、中心からPのパワーで発し、円周に到達する光は、L=P/(4πr^2)です。

図3bに示すように、次に半径 r'=2r/πの球を考えて、表面上をrの距離を光が伝搬し円周に到達する光は、L=P/(4πr’^2)ですから、球面上の場合は、前記の平面伝搬に比べて、r/r’=(π/2)^2 倍になり、増加することになります。

また、図には示していませんが、全球で考えて真裏からの光は、反対側の1点に収束するので、大幅に増加することが予測されます。

さらに、宇宙の膨張を考慮すると、図3cに示すように、膨張に伴い発光源との角度θが半径138億光年の現在の宇宙の大きさの球殻に投影されるので、10億~110億光年前の範囲では伝搬距離 r’=138億光年・sinθが増加することになるため、地球に到達する光度は減少することになります。

また、宇宙の膨張に伴い、波長が延びるため、到達する単位時間あたりのエネルギーは、1/(z+1)になります。

宇宙の丁度反対側に相当する130億光年前後の距離では、膨張を考慮しても球体表面による収束力が上回るため、増光することになります。

(4)10/28
・ローレンツ変換について、ご指摘をいただきました。

(5) 10/31
・赤方偏移等についてご指摘をいただきましたが、4次元宇宙論と異なる宇宙論のようでしたので、別途に展開していただくようお願いしました。

(6) 11/4
・宇宙の曲率、平坦過ぎる問題、加速膨張、ダーネルギー等に言及し、シンプルに説明できる魅力を語られました。

(7) 11/9
・宇宙は加速膨張していることが示唆されており、ダークエネルギーが源ではないかという説が有力らしい。
ダークエネルギー自体未確認なものですので、ホントかどうか分かりません。
・一般相対論を修正する試みも研究されているようですが、宇宙は若干歪んでいるのかもしれません。
・ローレンツ変換は特殊相対論での変換法則ですので、加速度系は扱えない。
「宇宙論は辻褄合わせ」に同意、シンプルな理論ほど信憑性が高い、というのも固定観念かもしれない。etc.

(8)11/9
・宇宙の膨張は空間そのものの膨張であり、速度の制限はない旨、ご指摘を受けました。

(9)2年前
・宇宙論的赤方偏移とドップラーシフトは別の現象である。
ドップラーシフトは光源と観測者が相対的に移動した結果生じる現象で、宇宙論的赤方偏移は空間の計量による膨張の結果生じる現象である。
図3d

図1と同じ趣旨のグラフで、コメントが入っていて理解し易いグラフです。

以上のようなご指摘を頂きました。

4 4次元宇宙の性質

4次元宇宙の性質を明らかにするため、図4に示す4次元宇宙膨張図を作成しました。
現在の位置を右下にとっています。
右側の明るいオレンジ色の太い円が、現在の宇宙の大きさの一部を現します。
我々の3次元空間においてどの方向を見ても、図4の現在の位置における接線方向(真上方向)になります。
縦軸と横軸は、ビッグバンからの年数(10億年毎)です。(作図の関係上(-)表示がありますが、絶対値で考えてください。)
オレンジ色の細い同心円は、20億年前ごとの昔の宇宙の大きさを表します。
太いオレンジ色の螺旋は、観測可能な光の経路と方向を矢印で表しており、発光した位置をマーカー●と、到達するのに要した時間、赤方偏移 z、および、後退速度(光速比)を、ラベルの数値(10億年~2億年ごと)で表示しています。(光跡は10億年ごとの粗い計算であるため、若干ズレている可能性がある。)
観測可能な光は、光速=299790km/sに限られますので、この光跡経路上で発光した光だけを見ている。(強い重力源等による遅延もあるが、それらは例外として。)

3次元空間から4次元空間を見ているので、どの方向を見ても同じ光跡というのが理解困難と思いるが、膨張する膜に例えられる3次元空間を進む昔の光を捉えているのであり、視線を動かせば異なる場所を見ている。視線方向と膨張半径を含む平面において、光跡の形状が同じになるということである。

現在の宇宙の大きさは、半径が138億光年ですが、円周長は866億光年であり、視線方向に半周するだけで433億光年になる。
実際の光は、風船に例えられる表面を進んでいますが、膨張を考慮すると、中心から4次元空間の中を螺旋を描いて我々の元に光が届いていることになる。
図4

5 検討結果

(1)Ia型超新星の減光問題

Ia型超新星の相対光度は、図5aに示すような計算結果になりました。
ただし、係数部分は適宜当てはまるように調整したので、絶対光度を算出したわけではありません。

赤方偏位によるエネルギーの減少(1/(z+1))は、観測の際に既に補正されることが判りましたので、二重評価としないため、計算から外しました。(k補正と呼ばれている)

4次元宇宙論の球面として計算したIa型超新星の相対光度を青線で示す。
主流の宇宙論の場合、完全な自由空間伝搬として計算した場合の相対光度を灰色破線で示す。
10億光年以遠110億光年までの距離範囲では、4次元宇宙論で計算すると、1等級分程度暗くなることが明白です。

図5a

Ia型超新星の観測結果のグラフと合わせるため、横軸に赤方偏移 z のグラフにすると、図5bのようになり、図1と比較すると、z=0.1~2.5の範囲では、減光していることが良くわかります。
図5b

(2)遠方銀河の増光問題
4次元宇宙として計算した青線の相対光度が、図5aの130億年付近で下がっている部分は、4次元宇宙の反対側に当たり、球殻のレンズ効果の影響が強く現れて、明るく観測される可能性のある領域である。

Ia型超新星の観測結果のグラフと合わせるため、横軸に赤方偏移 z のグラフにすると、図5bのようになり、図1と比較すると、z=0.1~2.5の範囲では、減光していることが良くわかる。

図5cに示すように134億年先に予想より明るい星が観測されているので、距離の相違はあるが、4次元宇宙論で説明できる可能性がある。

図5c

6 結 論

検討結果(1)のとおり、4次元宇宙論の球面として計算を行った結果、図5a5bに示すように、Ia型超新星相対光度青線と、自由空間伝搬として計算した相対光度灰色破線で示すとおり、観測結果図1と同じく、1等級分程度暗くなることから、観測結果を説明でき、この宇宙が4次元宇宙の中に存在していることを裏付ける結果を得た。

また、検討結果(2)についても距離の調整が必要だが、4次元宇宙の中に存在していることの特徴を示している。

7 その他

(1)ビッグバン宇宙論の矛盾解消
4次元空間の中を光速で膨張する膜宇宙を仮定することで、一点から物質出現、爆発先端が光速超え、地球中心宇宙、空間自体の膨張の根拠を与えることが出来るとともに、インフレーション理論を不要とし、ハッブル定数に基づく定速膨張と説明することができる。

(2)銀河の回転問題
渦巻銀河の渦状腕について、主流の宇宙論では、現実のゆるい巻き込みを説明できないとされています。
4次元宇宙では、空間が曲率により、重力が及ぶ範囲の限界や、半径が二倍になっても円周長が2倍より僅かに短くなることから、ダークマターに拠らずにゆるい巻き込みを説明できる可能性がある。

(3)重力
4次元宇宙論ビッグバンは、光速で移動可能な光/光子、あるいは、質量の無い粒子を拡散するものであると仮定することができる。
光速で膨張する膜の中に3次元空間が存在すると考え、膜自体には加速・減速の可能性は無いものとして扱うことができる。
放射方向は、3次元空間の3つの空間軸に対してそれぞれ直交しており、重力を発生させるメカニズムを説明できる可能性がある。

(4)ハッブル定数(背景輻射CMB)の相違問題
主に2種類が存在し、
宇宙背景輻射に起因するハッブル定数は、異なる値が算出されています。
宇宙初期の高密度であった時期の光の伝搬速度は、真空中の光速度(299790km/s)よりも遅かったことに起因する可能性が考えられ、平坦な宇宙論で導入されたインフレーションを除いて説明できる可能性があります。

これらは、難しいので結論を出せていません。

否定・肯定を問わず、ご意見等ございましたら、コメントください。

12/20 説明の計算式を一部修正

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