根本にちょっと誤解があるようなので、それだけは解消しておいた方がいいかもしれません。その誤解とは、itを「それ」だと訳してしまうことです。なぜなら、「それ」に一番近い単語はthatだからです。
I like that.
に近い日本語訳は「それ、好き。」ですが、
I like it.
は「好き。」という感じなのです。整理してご説明しますね。
thatは、文法的には「指示代名詞」と呼ばれます。「指でさし示す」ような気持ちがあることからこの名前がついているのです。
基本的に、手が届く範囲であればthis(「これ」や「この~」に相当)を使い、それよりも遠いとthat(「それ、あれ」、「その~、あの~」に相当)。
それに対して、itは人称代名詞です。
人称代名詞は、I-my-meのように活用するものであり、itもit-its-itと変化します。
人称代名詞は、日本語での「省略」にかなり近いところがあります。ですから上で「I like it.」は「好き。」としか訳しませんでしたが、「私」も「それ」も省略してしまう感じに近いのです。ですから、itを「それ」だと訳してしまうのは訳しすぎなのです。
itは、様々なものに対して使われます。例えば以下のような例は、日本語でも主語が特にありません。そういうよく分からないものまで指すことができるのがitなのです。
It's cloudy.(曇っています<天気>)
It's getting dark.(暗くなってきました<状況?>)
It's five o'clock.(5時です<時間>)
さて、赤ん坊についてですが、もちろん性別が分かっているならばhe(-his-him)やshe(-her-her)を使います。
ちなみに以前、『A Child Called "It"』というタイトルの小説や映画がありました。これは子どもの虐待に関するお話であり、自分の子ども(性別の分かっている人間)をitと呼ぶのは普通ありえないことです。
しかし、性別が分からないケースで人称代名詞を使うとしたら、itしか選択肢がありません。ただし、他の方も仰っているように、普通の会話であれば「your baby」みたいに表現すれば済みますから、敢えてitを使う必要はないでしょう。
ちなみに、家のインターホンが鳴った時や、ドアがノックされた時には「Who is it?」と言って出るのが普通です。日本語だと「どちら様ですか?」などと言い、相手を指す言葉は省略されますから、英語で人称代名詞が使われることには疑問はないかと思います。
ただし、ここで「Who are you?」とは言いません。youは二人称であり、(自分が話しかけている)相手をきちんと認識した上で使う言葉だからです。そのため「あんた誰?」的な失礼な表現になってしまいます。
ここでは、相手が見えなかったりして、認識できていませんから、itを使うしかないのです。
なお、電話の場合も見えませんが、声だけが自分のところに届いてきていますので、「どちら様ですか?」と言う場合には、その声をthisで指して「Who is this?」などと言います。もちろん、「May I ask who's calling?」のような別の言い方もありますね。