多くの方にQuoraのことを紹介していて、英語版時代からの長年のユーザーであっても「そうだったのか、知らなかった!」と驚かれるポイントがいくつかあったので、この機会にまとめてみようと思います。
Quoraは、ただの実名制Q&Aサイトではないのです!
「伝統的なQ&AサイトよりむしろWikipediaに近い」
Quoraの最大の特徴はこの一言でまとめられるかと思います。
つまり、質問文がWikipediaの見出しに相当し、回答の集合体がWikipediaの本文になるようなイメージです。Wikiのように同一文書を共同編集すると、どうしても上書きするのを遠慮がちになってしまったり、相反する政治的立場があると揉めてコンフリクトが発生しがちです。
しかし、自分の回答という自分専用の空間が確保されていれば、そんなことを気にせず自由にのびのびと書けますよね。相反する立場の意見であっても平等に併置され、高評価数などの客観的指標によってのみ順位が決まり、目立つ位置に表示されます。累積フォロワー数などで拡散力が決まり、格差が固定されるパワーゲームのSNSと異なり、あくまで質問ごと・回答ごとの内容で評価が決まるのも個人的に素晴らしいと思っている点です。
つまり、QuoraはQ&Aという皮を被ったナレッジベースであり、目指すところはWikipediaに近いのです。集合知を引き出すためのアプローチが違うだけなのです。
非営利団体ではなく営利企業として運営しているところも違いますが、それすらも目指すゴールに対するアプローチの違いに過ぎないのです。
実際、WikipediaのファウンダーであるJimmy WalesはQuora上でアクティブに書いており、またQuoraの思想に共鳴した投資家のひとりでもあります。
「質問は公共財である」
QuoraはWikipediaのようなものである、と考えれば自然と導かれることですが、Quora上での質問は誰の私有物でもありません。
そのため、質問は誰でも編集したりマージすることができ、かつその全ての変更履歴が公開された状態で残ります。
公共財である以上、この世界であなた一人にしか当てはまらないような質問ではなく、自分以外に少なくとももう一人、その質問に関心を寄せる人がいるであろうことを意識した内容が期待されます。
かつては質問文に加えて詳細な背景説明をするための項目があったりしたのですが、そうすると極めて個人的で汎用性のない内容になりがちだったので、まるでTwitterのように短文でエッセンスを凝縮した質問を求める仕様になりました。
なお回答は個人のものですが、「回答編集を提案する」機能を使って修正案を送ることができます。それを回答者がワンクリックで受諾すると反映され、その差分の履歴も残ります。(ソフトウェア技術者の用語でいうと「diffでパッチを送る」感じです)
「回答はお題つきブログのようなものである」
ブログって、さぁ書こうと思って身構えると書けないですよね。とくにタイトルを決めるのに最後まで迷うことが多いと思います。(このブログ投稿のタイトルでもそうでした)
しかしQuoraの質問文がブログのタイトルであると考えると、お題をもらってブログを書くようなイメージになります。先にタイトルが決まって、本文を埋めていく感じです。
プロフィールページでは自分の書いた回答がタイムライン形式で表示されるので、実際にプロフィールページをブログのように使うこともできます。
私自身の例でいうと、以下のURLがプロフィール&回答集になります。
https://jp.quora.com/profile/Kenn-Ejima/answers
また、「多くの高評価を受けた代表的な回答集」を表示することもできます。
https://jp.quora.com/profile/Kenn-Ejima/answers?sort=views
私たちは、ユーザがQuoraを利用するあらゆる種類の動機をサポートしたいと考えているので、当然ブログのようなパーソナル・ブランディング目的もアリです。
Quoraのプロフィール欄は極めて自由度が高く、リンクや画像など、回答本文と同じレベルでテキストの装飾が可能ですので、心ゆくまでカスタマイズしてください。
「良い質問をするとお金がもらえる(ことがある)」
Quoraパートナープログラムというものがあり、Quora上で高品質な質問を投稿されている方にはパートナーとなっていただいて、質問の投稿に対して報酬が発生するようになります。
ここで「良い質問」の定義とは何かというと、ハイクオリティで有意義な回答がつくような質問ということです。
なぜ回答ではなく質問なのか?というFAQについては、一般にQ&Aサイトでボトルネックになるのは回答よりも質問である、という知見が多くのところで語られていますので、関心のある方はGoogleやQuora上で検索してみてください。
Quoraでもデータ分析によるエビデンスがこの考え方を支持しており、現在のように質問サイドをテコ入れする施策になっています。将来的には他の領域でも報酬システムを拡大していく可能性はあります。
「自分でした質問に自分で答えることが推奨されている」
これも意外かもしれませんが、「Wikipediaのようなもの」「質問は公共財」「回答はブログ」と考えれば自然です。もし書きたい内容があって、該当する質問がない場合には、自分で質問を追加したうえでそれに答えることが推奨されています。
個人的には、「質問→回答」という流れだけでなく、逆に書きたいネタがあるときに関連する質問がないかをQuora上で検索する「回答→質問」という流れで書くことも多いです。このとき、ピッタリ該当する質問がなければ自分で追加すれば良いのです。
なお、この場合でもパートナープログラムによる報酬は発生します。「良い質問」と「良い回答」をセットで投稿すると、より高い効果があるでしょう。
「国ではなく言語ごとに空間が分かれている」
個人的に、これはソーシャル・ネットワーキング界における革命的なできごとでした。
これまでTwitterやFacebookなどのソーシャルネットワークでは、投稿するときの言語を英語にするのか日本語にするのか、いつも選択を迷いました。複数の言語を話し、その言語ごとに友人クラスタが別々の人なら誰しもが一度は悩むことだと思います。
日本語ばかり書くと日本語が読めない人にとってスパムになるし、英語ばかり書くと英語が読めない人にとってスパムになります。大量にスパムを投下してミュートされたりアンフォローされたりすることが嫌で、だんだん書きにくくなっていきます。
かといって、常に複数言語で併記するのは面倒だし冗長だし、日本語と英語でアカウントを分けるのも大抵どちらかに利用が偏ってしまい、うまくいかない場合がほとんどです。
ところがQuoraでは、読む側が自分の読める言語を宣言するという形であり、言語ごとに空間が分かれているので、書く側は自分の書きたい言語で気兼ねなくのびのびと書くことができます。私が日本語でたくさん書いても、日本語が読めないフォロワーのタイムラインを汚すようなことはないのです。
さらには、プロフィールも言語ごとに独立しています。たとえば日本語版と英語版でペルソナを分離することができるので、きめ細かなカスタマイズができます。
また、国ではなく言語で分かれているというのも秀逸で、日本語版では海外に住んでいる日本人や、日本語を勉強している外国人が入り混じって、とてもユニークなコミュニティとなっています。英語版ではインド人が多いのも特徴的です。
利用者の言語の習熟度によって、それぞれの言語空間に滞在する時間の長さが違ってくるだけという、とても自然で無理のない空間デザインです。
「炎上対策がビルトインされている」
Quoraでは初期から “Be Nice, Be Respectful (BNBR)” つまり「思いやりと敬意を示すこと」というポリシーが徹底されており、個人への人格攻撃などに対してはかなり厳格な対処を行います。
日本のネット業界では多くの場合、この点が後手後手で、有用な情報を発信する人を萎縮させる悪循環にはまりがちであったと思うのですが、Quoraでは明確に人格攻撃は認めないというポリシーでやってきているので、異なる意見を表明して議論を戦わせることは推奨していますが、言葉はしっかり選ぶ必要があります。
このポリシーは社会資本としてのナレッジの総和を増やすことに貢献すると信じています。
「エバーグリーンである」
Evergreenとは、「いつまでも色あせない」という意味です。
ソーシャルネットワークでは、書いた内容がどんどんタイムラインで流れていきます。ストックとフローでいうとフローで、思考のプロセスを流すのには良いのですが、検索性に乏しく、思考の結晶としての文書の完成度を高めるのにはあまり向いていません。
しかしQuoraでは、時代を超えて普遍的に通用する質問や回答というものがあり、そういったコンテンツはいつまでもGoogleの検索からヒットするし、長年参照され続けます。
したがって、しっかり丁寧に書いた回答が時事性だけに頼ることなく、無駄になることなく活かされます。
「様々なコンテンツに対応している」
画像をドラッグ&ドロップで簡単に埋め込めるのはもちろんのこと、LaTeXによる数式やコードの埋め込みにも対応しています。
[math]E_{n}(x)=\sum _{k=0}^{n}{n \choose k}{\frac {E_{k}}{2^{k}}}\left(x-{\frac {1}{2}}\right)^{n-k}[/math]
- def fibonacci(n)
- return n if (0..1).include?(n)
- fibonacci(n - 1) + fibonacci(n - 2)
- end
- puts fibonacci(8)
- # => 21
画像に関しては、縦長だと文章の流れを分断しがちなので、こんな感じの横長の画像を使うのがおすすめです。クリックしてズームすると細かいところまで見えます。どうしても縦長の画像を使いたい場合には、本文の最後に貼るのがおすすめです。
また、細かいエディタの機能では、「-」(Dash)を2連続で打つと「—」(Em Dash)になり、3連続で打ってからEnterすると
というHRタグ風のセパレータになります。
また、きちんと前後にスペースを開けて “abc” とダブルクォートを入力すると、このようにopen / closeの向きが正しく補正されます。
よーく見ないと気が付かないでしょうけれど、これらは英文ライターや細部に注意を払うデザイナーにとってはとてもポイントの高い機能です。
この独自エディタの完成度が高いので、本格的なブログと同レベルの画像や動画やリンクをちりばめたリッチなコンテンツを作り上げることができます。
個人的に長らく、文章を書くのにはMarkdown派だったのですが、QuoraでとうとうWYSIWYG派にコンバートしました。
以上、いかがでしたか?
Quoraには知られていない側面がたくさんあるので、今後もしっかり発信していきたいと思います。