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製薬業界で、インドといえば「ランバクシー社」。第一三共株式会社が、「世紀の大失敗」と言われているM&Aをした会社です。

今から約10年前、第一三共は、売上高が1,000億円を超えるメバロチン(高脂血症治療薬)の特許が切れ、利益が激減することを見越して、生産コストの安い後進国でジェネリックを作り、世界中で売ろうと考えました。

そこで目をつけたのがインド第4位の製薬会社であるランバクシ―。世界8カ国に製造工場を有し、150カ国以上に販売網を持ち、ジェネリック医薬品の売り上げはなんと世界で9位。

2008年、第一三共は5000億円でランバクシーを買収します。

しかし第一三共が買収した直後に、FDA(米国食品医薬品局)が、パンジャブ州トアンサ工場の製品品質に問題があると指摘し、米国への輸入を禁止しました。また、ランバクシ―がFDAに申請していた一部の医薬品についても、申請を却下しました。

以下は当時のランバクシーの状況です。

1、抗コレステロール薬にガラス片が混入し、48万ボトルを自主回収する大騒ぎになった。

2、原料や医薬品の品質試験において、合格するまで再検査を繰り返し、不合格の試験結果は破棄していた。

3、工場の研究室は窓が閉まらず、ハエが「多すぎて数えきれない」状態だった。

4、3日間の安全コースを受けただけで、薬の製造方法さえ教えられていない、一時契約社員が薬を製造していた。

5、保守技術者は空白の書面に署名し、後から設備点検を実施したかのように見せかけていた。

事態を重くみた第一三共、外部から品質管理のコンサルタントを雇い、数100人の品質管理部員をインドの他メーカーから引き抜き、トアンサ工場に投入しましたが全く効果はありませでした。しかも第一三共はランバクシー買収の契約書に、補償条項を盛り込んでいなかったため、販売停止による赤字も全くランバクシーに補償されませんでした。

日本の製薬業界では、この事件を知らない人はいないくらい有名なので、誰もインド製の医薬品を買いたいとは思わないのです。インドのジェネリックは、アフリカのような貧しい国でのみ大人気なのです。品質第一に生まれ変わらないと、日本への輸入は厳しいですね。

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