Kenn Ejimaさんのプロフィール写真

元マッチングアプリ開発者です。

職業柄、データが手元にあったので集計してみたことがあるのですが(ほぼ100%アメリカ在住者のデータですが)、喫煙者の選択肢が減るのは間違いないと思います。

こちらの記事をみても、64%の女性は「見た目やプロフィールなど他のすべての条件が完璧でも、喫煙者はお断り」らしいですね。つまり、その時点で選択肢が1/3になるということです。

Smoking is cramping your dating style: Survey

ところが、マッチング・アルゴリズムの面白いところは「最終的には相手が一人(ないし少人数)だけ見つかれば良い」というところです。選択肢が多いことにはあまり意味がなく、最終的には自分と意気投合する人が一人でもいれば良い、というところです。

これを逆の視点からみると「女性の喫煙者おことわり」の男性も同数以上いるので、最終的には「喫煙者同士」がマッチしやすくなるという状態に収束していきます。

これは他の属性でも同様です。ボディピアス、タトゥー、派手な髪型、その他の特徴のある嗜好を持っている人たちは、その共通する属性でマッチしやすくなります。

そもそも、アプリでの出会いというのは固有の難しさがあります。その背景は、英語ですがこちらに詳細に書かれています。

Why Online Dating Doesn’t Work For Most Guys

ちなみにGhostingというのは日本語でいう「未読スルー」みたいな現象のことです。

「限られた時間」という万人に共通の制約の結果、選択肢が多いはずのイケメンや美女も、多くの人にチャンスを与えることはできず、いわゆる「似た者同士」「同じレベル感」の人たちがどんどんマッチしていくという回帰現象が起きます。

マッチする可能性のない人からのメッセージというのは双方にとって時間と労力の無駄ですから、お互いの検索結果からも消えて存在が見えないほうがマシというのが論理的帰結となります。

オンライン・デーティングの普及とともに、「美女と野獣」タイプの一発逆転的、例外的な組み合わせはほぼ成立しなくなり、社会的階層の固定化に拍車がかかっているように見えますね。

夢も希望もない話に思えるかもしれませんが、マッチングアプリが向いてない層というのは確実にいます。そういう人は、古典的ですがバーに行くなど、「プロフィールで文字にできない、さりげない良さ」をお互いに感じることのできるリアル世界での活動を増やすほうがいいのだと思います。


それから、デートを戦略的に考え、数学的にアプローチするなら「37%ルール」というのがあります。経済学からの援用で、最適停止問題とか秘書問題と呼ばれているもののバリエーションです。

37%を示す数式はとても美しく、ネイピア数が登場する[math]1/e[/math]です。(正確には0.3678794412…)

Strategic dating: The 37% rule

Kissing the frog: A mathematician's guide to mating

デート候補者をリストアップしたら100人いたとします。ただし、会う順番は選べないものとします。この場合、最初の36人と会っているうちは「この人だ」と決めず、我慢してスキップして、37人目以降で、それまでに会った人よりも良い人がいたら即決すれば、「労力を最小化しつつ、間違った相手を選んでしまうリスクを減らしつつ、うまくいく確率を最大化できる」というのです。

どうでしょう、理想の相手に出会うには、そんなに数をこなさなければいけないの?という感想を持つのではないでしょうか。これはこの秘書問題が心理学や実験経済学で扱われてきた命題そのもので、

「対象を評価するコストが高いと、人はあまりにも早く決定を下す。」

という考察が得られます。

また、実際の数字を眺めていると、いわゆる「高嶺の花」「ハンサム王子」にまぐれでヒットすることが確率的にはありえないことが深く納得できると思います。

女子よりも[math]1/e[/math]の数式のほうに心を奪われるかもしれませんが、オタクにはオタクの勝負のやり方があるのだ!

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