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医者にしか分からないことというと偉そうに聞こえますが、そういうことではなくて、医者以外の他の方との最もギャップがある認識に関して書きます。

医者が患者の命を助けるとか、テレビドラマで言っていますが、そんなことはありません。命が助かる手助けをしてるだけ。自己治癒能力のお手伝いです。

コードブルーで出てくるような救命救急は外科的な手技を発揮するのでいかにも自分の力で治してるみたいでかっこよいですが、我々内科は薬で治してるのか、患者が勝手に治ってるのかわからず目立ちません。例えば糖尿病内科の日々の外来をドラマにしてもなんか治しているみたいに見えなくてかっこ悪いのでたぶんドラマになりません。

ですが、外科にしても外科医だけの力で治っているわけではありません。小さい傷をした時、縫いますが、表面を引っ付けるだけで1週間すると勝手に傷が引っ付きます。子供のゲーム機が壊れて二つに割れたからって、両端を引っ付けて1週間おいておいても治りません。確かに大きな傷は血管を処理して引っ付けたりしますが、それにしても無数にある血管を一つ一つ引っ付けるわけではない、小さい血管や皮膚はくっつけておくと勝手に血管ができてきれいに元通りに治ります。

我々の医療行為は人間の自然治癒能力と共存したうえで治療のお手伝いをしています。もちろん我々は医療行為としてした方がしないよりよいから行うわけですがだからといって我々がすべてをコントロールしているわけではありません。そのような認識なのでドラマとかで「俺が治して見せる」とかいう場面を見ると萎えます。同様に「俺の力不足で患者が救えなかった」というセリフも萎えます。お前はそんなに偉くはないだろうと、両方の意味で。

「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね………」

【ブラック・ジャック】名言集「それを聞きたかった」 - NAVER まとめ

手塚治虫は自身が医師であったため(ブラックジャックそのものはありえないことが多いですが)時折見え隠れする上記のような描写には共感を覚えることがあります。医者にしかわからないとこととは、我々医者の無力さ(と人体の精巧さと高度な自己治癒能力)を実感するとともに、我々は我々にできることを粛々とやるしかないというその感覚かもしれません。

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