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これは以前、大学でプレゼンをしたので詳しく答えられそうです。

医者がしがちな失敗、とても沢山あるのですが、どれも人間ならばしてしまう認知バイアス - Wikipedia によるものが多いです。そのいくつかを説明していきます。

Commission biasコミッションバイアス
これは患者を診断するにあたり、処置しない診断より、しなければいけない診断の方に判断が傾く傾向です。精神科等、実質的な証拠をもって診断が出来ない疾患、例えばちょっと落ち込んでいるだけの人をうつ病だと診断してしまう可能性が高くなります。「なんでもないですよ、安心してください」と言うのは医者にとってとても勇気のいる事なのです。しかし処置の要らない患者に処置をするのは害に他なりません。

Satisfaction of Search 検索満足感
これは何か目立つものを見つけた瞬間、診断が終わってしまう認知バイアスです。例えば咳がでる患者のレントゲン写真を見る場合、右の肺に目立つ肺炎の影を見つけ、「肺炎」診断完了となり、患者は抗生物質を処方してもらって帰ります。しかし左の肺の目立たないところに肺がんの早期陰影があるのを見つける事が出来ない。これが検索満足によるものです。医者は何か目立つものを見つけても満足せず、全てを検討しなければいけないのです。

Availability error よく見る事バイアス
例えば胸が痛いという主訴で患者が来ました。

心臓内科の医者が最初に浮かぶのは心筋梗塞、大動脈解離、
心療内科だと心身症、
整形外科なら肋間神経痛、
消化器内科なら逆流性食道炎など、
それぞれ今まで見てきた患者の数によって浮かぶ原因が違ってきます。
自分が見てきた患者の傾向が無意識に診断に影響を及ぼすのですね。

Anchoring error 係留バイアス
診断早期に、現症の特殊な点に固執してしまう。最初に聴いた症状、もしくは最初に認めた症状、徴候によって後の判断がゆがめられる事です。

Attribution error 帰属の誤り
自分の持っているステレオタイプによって判断がゆがめられる事です。例えば若い男が夜中に意識混濁で救急車で運ばれてきます。その瞬間、「また酔っ払いか」と 若い男 夜中 意識混濁 だけの情報から アルコール というステレオタイプがポンと出てきてしまうのです。

Confirmation bias 確証バイアス
仮説を棄却するような反証的な徴候よりも、仮説を支持するような確証的な根拠をさがそうとする。例えば胸が痛い患者を「心筋梗塞か」と診断した後は、患者が「頭も痛い」、「足が痛い」と言っても診断に必要のない情報としてプロセスしてしまう傾向です。

これらの認知バイアスは、医者だけでなく人間であれば誰にでも当てはまるものです。しかし医者としてはこの認知バイアスに惑わされないように、意識的にバイアスがかかってないか、常に自問しながら診断、処置していかなければならないのですね。

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