アンゲラメルケルは頭脳明晰（理論物理学で博士号を取得し、英語教師でもありました）で信じがたいほどの忍耐力があり、自分の信念をしっかり持っていますが、ただ頑固なだけではなくその場に応じた的確な判断ができ（ここがイギリスのメイ首相との大きな違いです）、自分はどう批判されてもドイツのため、ヨーロッパのため、そして大げさではなく世界のために自分の政治生命をかけてきました。

1954年生まれのメルケル首相は現在64歳、2000年からCDU（キリスト教民主同盟）党首、2005年から初めての女性ドイツ首相になり、昨年12月にCDU党首の座を後継者のAnnegret Kramp-Karrenbauer　アネグレットクランプカーレンバウアーに引き継ぎました。私が苦手とするダブルネームです。あまりに長い名前なのでドイツではAKKアーカーカーと呼ばれています。余談ですがこうゆう名前の人から電話がかかってくると聞き取るのに大変でした。

CDU党首の座は退きましたが、メルケルはまだドイツ首相です、任期が終わる2021年の前にAKKに首相の座を明け渡すと言われていますが、まだいつになるのか確定していません。その後は政治活動を引退するようですが、その後どうするのかも未定です。

長い任期の間に数々の偉業を成し遂げてきました。二酸化炭素排出削減などの環境問題対策、核弾頭撤廃、福島原発事故のあと、ドイツでの反原発デモに柔軟に対応し、増やしていく予定だった原子力発電所計画を中止しました。

世界的にはイラクの内戦を防ぐため強硬にサダム・フセインを捕まえるよう尽力し、2007年以降の金融危機をきっかけにおこったユーロ危機では、メルケルは厳格な緊縮財政計画を提唱しており、これは国際通貨基金（IMF）に非難されながらも強いユーロを訴え続け、ギリシャの経済危機では、何日にも渡る睡眠時間も取れない夜通しの会議で自分の主張を貫きました。ものすごい信念です。

そして何よりも特筆すべきなのは難民問題でしょう。ハンブルグで生まれ、幼児の頃に旧東ドイツに引っ越したメルケルの父親は牧師でした。子供の頃から人の命の大切さを学んできたのです。

2015年、シリアやアフガニスタンからの難民が大勢ヨーロッパに避難してきたとき、” ドイツはあなた達を必要とします。どうぞドイツに来てください。“と暖かく迎え入れたのです。これは人道的な立場から言って間違っていなかったと私は思います。牧師の娘として育ってきたメルケル首相は罪のない人たちを見殺しにすることはできなかったのです。

彼女が犯した失敗はオーストリアとハンガリーの政府首脳との協議で、オーストリアとハンガリーの国境、特にシリアとアフガニスタンからのブダペストに隣接する難民がハンガリーの登録なしでドイツに入ることを許可したことでしょう。フランス、イタリア、スペインなどのEU加盟国首相たちに相談することなく決めてしまったので後々批判され、協力を得ることができず、ドイツだけで110万人もの難民を受け入れることになってしまったのです。

ドイツに難民として入り、国から助成金をもらっている人たちが暴行事件を起こしたりまたテロの温床になっていたりとドイツ国内でも難民問題のメルケル首相の対応に激怒している人たちも多く、AFD極右政党の台頭を許す結果となってしまいました。

２００８年にオペラ公演に来たアンゲラ・メルケルの”実は彼女はセクシーだった写真”を載せておきましょう。ドイツでは大変な反響を呼びました。メルケルは強い政治家で女性であることを感じさせなかったのでこれにはみんなびっくり！しました。あまりの反響の大きさに驚いたメルケルはその後二度と胸元の空いたドレスを着なくなってしまいました。

最後にメルケル首相の夫Joachim Sauerはフンボルト大学ベルリンの教授で量子化学者です。ドイツで最もノーベル賞に近いところにいる学者と言われています。そんな彼がサミットなどで他の首相夫人たちに混じってガーデンを散策したり、ランチやお茶を楽しむ様子は可愛くてしょうがないです。メルケルは素晴らしい理解あるご主人に支えられてここまでやってこれたのです。