Quora Userさんのプロフィール写真

『天空の城 ラピュタ』でのムスカ大佐が主人公パズーとシータに迫るシーンです。

本作において非常に有名なシーンであり、映画を観ていない方でも、ムスカ大佐の「3分間待ってやる」というセリフは知っているというパターンも多いかと思われます。

まずこちらのシーンに至るまでの経緯を簡単にご説明させて頂きます。

ムスカ大佐によって捕らえられたヒロインのシータは、一瞬の隙をついてムスカから飛行石を奪い逃走します。

しかし逃走の最中にパズーへと飛行石を託し、ムスカに再度捕らえられてしまいます。

そしてシータに対してムスカが迫る時、飛行石を持ったパズーが現れます。

そこでパズーは、ムスカに囚われ銃口を向けられたシータを助けるために「石(飛行石)は隠した。シータを撃ってみろ。石は戻らないぞ」とムスカに駆け引きを投げかけます。

続けてパズーは「シータと2人っきりで話がしたい」と要求し、これに対しムスカは「3分間待ってやる」とパズーの要求を飲むことなるのです。

ですがムスカがパズーからの要求を飲んだこのシーンには、実は”少々不可解な点”があります。

まずムスカは非常に優れた射撃能力を有しており、パズーが大砲を持っていたとしても脅威とはなりません。

また『シータを人質にとって石の在り処を吐かせること』も可能だったはずです、しかしムスカは3分間待ったのです。

そうなると、このシーンは『優位に立っている者が慈悲深い行動を見せた』様な印象を感じてしまいますが、実はこの時のムスカの「3分間待ってやる」という発言には”ある理由”があります。

それはムスカが持っていた銃の弾が空になっていたから、というものです。

さらにこの時パズーの大砲にも弾は入っていませんが、ムスカはそのことを知りません。

つまり、このシーンでは『ムスカもパズーも両方弾がない状況』なのです。

そこでムスカはパズーに悟られないように銃を装填するため、わざと要求を飲み”3分間待った“という訳です。

事実として「3分間待ってやる」と言いながら、リボルバーの装填を終えてから直ぐに「時間だ答えを聞こう」と問いただしています。これは時間にして約50秒しか経っていません。

つまりムスカの「3分間待ってやる」という言葉には、慈悲からくる発言だったのではなく、パズーに気づかれずに銃の装填するためだけの、ただの時間稼ぎだけが目的だったとわかる、まさにムスカの姑息さが滲み出る名シーンだった訳です。

●おまけ

ですが、ここでも疑問がまだ残ります。

それはムスカの銃の残弾がゼロだったとしても、パズーを無力化するコトは十分可能であったのではないか?というものです。

確かにムスカは制服組ではないにしろ、特務機関所属の軍人であり要塞でも暴れるパズーを片腕で押さえていた事からも、ある程度の体術の心得はあるはずです。

しかもパズーの武器を一目見てそれが近接戦闘に適さない武器であること、1発撃ったら再装填に時間が掛かる武器であることも見抜いていた事は間違いないでしょう。

これらのムスカの能力から「リロードの時間を稼ぐために3分間待ってやった」というのはやや違和感が残るとも言えます。

では次にどういう理由で3分間待ってやったのか、というのをもう少し考えてみましょう。

①戦闘行為そのものはあくまで手段であるコトをよく理解している

ムスカが特務機関所属ということを考えると、恐らく交渉や駆け引きのエキスパートであると考えられます。

つまりこの時点でムスカの最大の目的は、「飛行石を奪い返す」ことであり、その目的達成のためには有無を言わさずにパズーを無力化するよりも、3分間待ってやった方が得策であると判断したと推測できます。

②シータを人質にした場合のパズーの行動

先程シータを人質にすればパズーがすぐ石の在り処を明かすのではないか?と考えましたが、パズーも状況判断力には優れた子供であり、ムスカが冷酷な性格の持ち主で、石を取り戻した途端に攻撃してくるコトは理解しているでしょう。

またムスカも人を見る目にも長けている人物であり、2人を追跡している間にそうしたパズーの頭の回転の良さも見抜いていたはずです。

以上の要素からパズーの性格を考慮すると、たとえシータを人質にしても「先にシータを離せ」「いや先に石の在処を言え」の平行線を辿り、交渉が長引くコトが予想されます。

つまりパズーを力でねじ伏せたところで意固地になって余計口を割らなくなる可能性が高いと判断したムスカは、あえてパズーの要求をのむ形で譲歩してみせた方が良いと判断したと推測できます。

③パズーとシータに残された選択肢

ムスカにとってこのシーンではラピュタの自爆コマンドの存在は知り得ない情報です。

それによりパズーとシータがここで話す内容といえば、大抵は逃げる算段であると予測したはずです。

パズーの状況判断能力を買っているムスカからすれば、無闇に大砲で対抗するのは馬鹿げているとすぐに理解できます。

そうなると2人が考えられる選択肢は逃げる以外には存在せず、万が一逃走されても途中で飛行石を回収するなり、逃げる2人をつけていきながら飛行石の所在を確認した段階でパズーを始末すれば良いと判断した事で、ムスカには優位性があったと推測できます。

●しかしミスを犯す

結果的にはパズーが実は飛行石を隠し持っており、シータと共にバルスってしまい「目がー目がー」となってしまったことで、ムスカの策略は全て裏目に出る事になります。

やはりムスカにとっての最大のミスは飛行石によるコマンド認識の不足にあります。

確かに飛行石によって発動できるコマンド全てを覚える必要はなかったかもしれませんが、少なくとも自爆コマンドの存在は認知しておく必要はありましたし、仮に「滅びの言葉」を使わないとしても、要塞で発動した「我を助けよ」のようなコマンドを使われただけでも戦況が覆る可能性はあった訳です。

しかしムスカはその可能性は無いと判断したからこそ、”3分間待ってしまった”のでありシンプルにここはパズーをぶちのめしてから飛行石取り返す事が最善であったと言えます。

やはり「策士策におぼれる」というのはあるものですね!

この質問に対する他の21件の回答を表示